■家相は日本で独自に発展
みなさんは家を建てたり、改築したりする際に家相を気にされるでしょうか。
とくに鬼門(北東の方角)や裏鬼門(鬼門の反対の方角、南西)については玄関や水回り、トイレを作るのはよくないといわれ、今でも避けてる方がいらっしゃるように思います。
家相は奈良時代、仏教とともに中国から伝わった風水思想のひとつですが、日本の陰陽道のなかで独自に発展したもので、実は本家中国に家相というものはないのだそうです。
■江戸時代の家相ブーム
陰陽道の最盛期である平安時代から室町時代にかけ、家相は宮廷や貴族社会に広まります。現代でも鬼門(裏鬼門)の方角に魔除けとなるヒイラギやナンテンを植える風習が残っているように、当時は平城京の北東には東大寺を、平安京の北東には比叡山延暦寺を設けるなど、重要な建物を作る際には鬼門と裏鬼門に厄災を避けるための寺院や神社が配置されていました。
その後、江戸時代になって印刷技術が進歩すると多くの占いや家相本が出版され、商人や武士の間にも一大家相ブームが起きたようです。
■鬼は中国の北方民族
鬼門の思想はもともと中国のものですが、なぜその方角を忌み嫌い鬼門と呼んだのでしょうか。
一説によるとかつて秦の始皇帝が北方からの遊牧騎馬民族の侵入を防ぐため万里の長城を築いたように、中国では常に北からの外敵に襲われる脅威が存在したからだといわれます。
また南西には強い偏西風が吹き、それらの方向に出入口を作ると外敵や強風(台風、黄砂、病気)を招き入れると考えられたようです。
■鬼門忌避に根拠あり?
では日本における鬼門思想は迷信かというと、実はそうともいいきれないようです。なぜなら家の北東といえば日当たりが悪いので冬は寒く、夏は湿気がたまりやすい場所。昔の家ならトイレや水回りは避けたいところです。玄関も寒い地方では強い北風にさらわれて雪に埋もれるかもしれません。
ただしそれは昔のこと。現代の建築は空調や照明設備が整っているのであまり方角にこだわる必要はなさそうです。